
・導入事業者:遠州中央農業協同組合
・職員数:588名
・導入日:2025年8月
・担当:園芸課 小栗課長、大庭様

JA遠州中央は、磐周地域12JAが平成4年10月1日に合併し、誕生した農業協同組合です。「農業を通じて新しい時代の住みよい社会と健やかでうるおいのある生活を地域の人たちとともに育み高めつづける」という基本理念のもと、地域農業・地域社会の発展のために日々努力を続けています。主要拠点として園芸流通センター、袋井地区、森地区、の3拠点があり、一部地区、品目については園芸流通センターへ集約を行います。主要品目としてはいちご、レタス、白ネギ、海老芋、トマトなどを生産しています。本店園芸課の役割としては、生産指導や青果物の販売をメインとして、nimaruJAの推進も行っております。25年5月よりいちごから導入をスタートし、トマト、トウモロコシ、いちじくと導入品目を拡大しております。
将来的な職員の減少を見据え、今のうちから業務の簡略化を進める必要がありました。同時に、単に現状の業務を維持するだけでなく、『販売力を強化して、農産物の単価を1円でも高くする』という戦略的な目標を掲げており、その実現のためにはアナログな業務フローの改善が急務でした 。
しかし、当時は生産者が持ち込んだ紙伝票を、職員が手入力(パンチ入力)しており、入力とダブルチェック、日々の集荷業務に追われるのが実情でした。さらに手入力の作業は、等級ごとの数量の転記ミスや、生産者コードの入力違いなど、常にヒューマンエラーのリスクと隣り合わせでした。
また、農産物の現物が到着するまで出荷量を全く把握できず『生産者やトラックが集荷場に来てから初めて荷受け量を把握できる』状態だったため、事前の荷受け準備はもちろん、戦略的な販売交渉も行えず、常に後手の対応を迫られていました。
同じ静岡県内のJAハイナン様が先にnimaruJAを導入しており、視察に伺う機会がありました。そこで実際にnimaruJAが現場で活用されている様子を見て、自分たちのJAでもスムーズに運用できる具体的なイメージが湧いたことが、導入の大きな決め手の一つになりました。
生産者の皆様にご協力いただくことが不可欠だと考え、説明会を開くだけでなく、品目ごとの運用初日には、各集荷拠点に通常より多くの職員を配置しました。荷受け担当のパート職員への丁寧な運用フォローや、nimaruJAをまだ使っていない生産者様がいらっしゃった際には、その場で登録方法から使い方までマンツーマンで丁寧に説明するというような地道な積み重ねが、現場でのスムーズな普及に繋がったと感じています。

最も大きな変化は、事前に出荷数量を把握できるようになったことです。それによって、市況を見ながら『より高値の市場に売り込みをかけて先に数を割り振ろう』といった、戦略的な販売交渉が可能になりました。感覚的な話にはなりますが、結果として平均単価の向上に繋がっています。以前は難しかった、攻めの販売ができるようになったのは大きな進歩でした。
これまで職員が手入力していた作業が、生産者自身のスマホ入力とCSVアップロードに置き換わりました。これにより、入力作業の時間が大幅に短縮されただけでなく、職員による入力ミスもなくなりました。空いた時間で生産者の方と出荷予測や栽培管理等についてコミュニケーションを取れるようになり、信頼関係の構築に繋げられています。また、『農家の方が出荷連絡が楽になった』という声を聞けたのが何より嬉しく職員のモチベーション向上に繋がっていますね。
また、出張先でもスマホ一つで各拠点の出荷状況をリアルタイムに確認し、電話で市場や経済連と出荷の交渉や調整を行えるようになりました。場所を選ばずに仕事ができるようになったのも大きなメリットです。紙伝票の管理もなくなり、紛失のリスクや保管スペースの問題も解消されました。
nimaruJAは、導入してすぐに劇的な変化があるというより、日々の様々な業務が少しずつ改善されていく、まさに『ボクシングのボディーブローのように効いてくる』システムだと感じています。一つ一つの改善は小さくても、積み重なることで組織全体の大きな業務効率化と意識改革に繋がっています。例えば、これまで毎日かかっていた集計時間が着実に減っていく。これだけでも日々の負担は軽くなります。さらに、現在は5品目で導入していますが、今後導入品目を一つ増やすたびに、その品目で生まれた業務効率化が丸ごと上乗せされていきます。一つの品目だけでは小さな変化かもしれませんが、それが積み重なることで、組織全体の大きな成果に繋がっていくのです 。

今後は、一部の詳しい職員に頼るのではなく、各拠点にnimaruを使いこなせる担当者を育て、組織全体のレベルアップを図っていきたいです。最終的には、在宅で分荷作業ができるような、より柔軟な働き方の実現も目指しています。そのためにも、kikitoriには職員の知識向上を手助けしてくれるような、研修や勉強会のサポートを期待しています。