・導入事業者:八代地域農業協同組合
・職員数:486名
・導入日:2022年10月
・担当:古閑さん(北部総合営農センター)
約20年間営農指導員としていちごの栽培の技術指導や、経営指導、若手指導員の育成等に携わっています。当JA内には現在いちごの部会が4部会あり、全体的な取りまとめを行っています。
いちごについては以前と比較してセリよりも相対取引が増加しておりますので、当JAの方針としてはシーズンを通して出荷ができない時期がないように工夫をしており、特定の品種に偏らず、複数の品種を組み合わせて安定的に出荷ができる体制を構築するために組合員の皆様と日々奮闘しています。
各JA共通していると思うのですが、以前は職員数も多く、組合員の方々もゆとりがある経営ができていました。現在はどうしてもしっかりと経営をしていく必要が出てきています。私が入組をした20年前と比較すると、職員数は約3分の2程度に減少しています。
そのような中で二つの課題に直面していました。
一つ目はいちごについては品質を保つ為に、早朝収穫が必須であり、収穫開始時刻を如何に早くするかが重要です。また、以前に比べ収穫量も増え、収穫時間の遅延に繋がり収穫時間の後退による品質低下の恐れがありました。
その為、集荷体制における荷受け体制をそれまでの「当日持ち込みのみ」から「前日、当日」に分け、体制を構築しはじめようとしていたのですが、規格も増えてきている中で、前日と当日の荷受や集計作業の集計を紙のみで実施するとどうしても時間がかかりすぎています。
当JAの体制上、荷受けも指導と販売が協力し行っていますが、いかに作業を効率化していくかが非常に重要となっていました。
二つ目は情報の伝達においても職員数が充実している頃であれば、手紙を配る為だけに農家を廻ることもできましたが、時間に限りがある中、難しい側面もあります。また若い生産者も増え、固定電話がない方も多くなり、以前行っていたようなFAXによる情報伝達が難しいケースも出てきていました。
そのような中で、生産者の皆様に少しでも多くの情報を提供していく為に、以前はLINEグループを作成し、情報伝達を行っていました。一方でそのような場合、生産者の方たちに一律の情報をお渡しし、一部の生産者の方には必要のない情報も発信してしまいます。
必要な情報を必要な人にいかにスピーディに届けるか?を模索していました。
一番大きなポイントは、JAのみならず組合員を含めてシンプルなシステムで感じていた課題を解決できると感じたことです。
これまでのシステム化の取り組みにおいては、組合員をどう巻き込むのか?が難しかったのですが、特に組合員側の利用については、「nimaruJA」は組合員がLINEを窓口にしたクラウドサービスから利用することができることや組合員の使いやすさに重点をおいた独自の仕組みや工夫により、これなら年配の方も含めた組合員がうまく使うことができる!と感じ、導入を決めました。
一気に全組合員を巻き込むことはあえてせず、シーズンの中で徐々に利用者を広げていく方法で活用を進めていきました。先ほどお伝えした、「前日出荷」を行う経営の規模の比較的大きな組合員からまずは希望を募り、市況の配信も「nimaruJA」で配信を行いました。
そうすると実際にシーズンの中で組合員の間で「nimaruJA」が話題になり、JA側で定期的に希望を募ると自然発生的に利用者が拡がっていきました。その結果、大きな課題や支障もなくスムーズに「nimaruJA」を浸透させることができたと感じています。
大きく2点の効果を感じています。
1点目は、荷受け作業の効率化です。
「nimaruJA」の導入後は前日に荷受を行なった荷物が組合員や規格毎にいくつあったのかといった情報がタイムリー且つ正確に把握でき、当日の入荷情報も組合員が荷物の持ち込み前の時点で「nimaruJA」に入力をしてくれることで朝の時点で荷受の作業がすぐに行えるようになりました。
我々の場合、約80名の方が一気に集荷場に出荷をしますのでそれまでは集荷場の混雑もかなりあったのですが、「nimaruJA」の導入により荷受の業務を効率化、分散することで組合員の拘束時間も減少させることができました。
本来、出荷量も増えている中で効率化を考える場合、集荷所を作り直すことも選択肢の一つですが「nimaruJA」の導入で回避できたことは大きいと感じています。
2点目は情報の伝達による営農・販売指導効果の向上です。
いちごは手作業が多いため、組合員の家族の皆様に情報を伝えることが重要です。
「nimaruJA」の導入前はJAで開催する講習会に参加した組合員が、家に帰ってから実際に作業を行うご家族に情報を伝えきれていないということがありました。しかし、「nimaruJA」の導入によってご家族にも情報を配信することができるようになったことで営農指導の効果自体も上げられていると感じています。
また指導員としては実際に組合員を訪問し、圃場を見て指導をすることも多いのですが組合員に常に立ち会っていただくわけにはいかず、以前は伝えたいことがあればメモを置いてくるといったようなことをしていたのですが、「nimaruJA」の導入後は営農指導の内容に写真をつけて配信することで個別指導も効果的に実施することができるようになっています。
もちろんお会いするのがベストではあるのですが、指導員も減少する中でも効果的、効率的に指導をしていく手段として非常に役立っています。
現場で感じることは、ひと昔前とJAを取り巻く状況が変わってきている中で、効率化の取り組みをしていかないとJA全体として立ち行かなくなってしまうのでは?という危機感があります。
職員が減少する中で組合員をしっかりと巻き込んだデジタル化の取り組みを実現しながら、職員が減少する中で、いかに持続可能な体制をJAとして構築していけるかをしっかりと考えなければならないと思っています。
今回、「nimaruJA」を利用してみてデジタル化の取り組みがしっかりと効果が出るということは体感できましたので、私個人としてはできる限り早くJA全体へ取り組みを普及させることで、JA全体の効率化を実現したいと考えています。
特定の領域だけに特化しているシステムの場合、「深く狭く」でどんどん複雑になり、JA職員も組合員も双方が使いづらくなってくるケースが多いように感じています。そうしたシステムがいつの間にかうまく使われなくなっているということがこれまでに何度かありました。「nimaruJA」の場合、JAから見ても、組合員から見ても、非常に洗練された仕組みとなっており、シンプルですぐに取り組みをはじめることができます。
導入を検討する際に役員の方から「このシステムはJAの為のものなのか?組合員の為のものなのか?」という質問がありました。
実際に「nimaruJA」を活用し、双方にしっかりメリットがあることが体感できました。JAの立場からすると組合員をうまく巻き込んでいけるか?は不安な点だと思いますが、是非安心して活用を検討してほしいです。